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紀州 中上健次

紀州 木の国・根の国物語 (角川文庫)一夏かけて読了。熊野の旅もふまえて、自分の中で奈良と和歌山の風土の違い、差別性の違いが整理される。部落差別は、奈良で育つ中で避けられず向き合わされるものやった。東京9年暮らしから奈良に戻って、改めてそれを…

初夏から夏に読んだ小説

末裔 ディスカスの飼い方 (幻冬舎文庫) 恋都の狐さん カンタ SOSの猿 四とそれ以上の国 (文春文庫)

働くことを考える

3.11以降の働き方を考える、という言葉に違和感をもつ。震災の前から、未来の働き方をしてきた人たちがいる。『いま、地方で生きるということ』を読んでいると、以前から見知った人、注目していた人が登場している。彼らの仕事観は、以前からずっと独自の世…

ミシマ社の本屋さん

選ばれた本たちが集まっている本屋さん。今の時代を感じさせる、同時代だからこそ関心を持つ、あらゆるジャンル。冊数は少ないのに目配り良い。何かの趣味に閉ざされた感じはないからとても心地よい刺激。城陽市の場所がまた、なんとも言えず気持ちいい。

果てしなく美しい日本 (講談社学術文庫) ドナルド・キーン著

日本人の差別感覚を見事に言い表していてびっくりした。日本の国のなりたち、都市と地方、階級意識、いろんなものを的確に書き表し、文章は島国根性に集約されていく。端的に言い表した文章を読んで、人間ってかなしいものやなと思った。社会は差別を含めて…

石田衣良『眠れる真珠』

石田衣良眠れぬ真珠 (新潮文庫)のラスト、主人公が真珠を買うシーンが強烈に心に残る。色形ともに的確に自分に似合う真珠を選び出す女性主人公。選ぶ真珠の色彩と諦観と、大人びたさばけた感じが格好いい。真珠は、女性版画家の主人公にとって大切な買い物や…

坂口安吾『白痴』

坂口安吾『白痴』を再読。主人公の白痴の娘が誰の子供か分からない子を孕んでいる、という冒頭のさりげない一文と、娘が家に来て「好きだから隠してくれると思った」という内容のことをぶつぶつ言うあたりにびっくりする。なんとおおらかな、というのが率直…

シューカツ!

個人的に就職活動をほとんどしなかったので、ひぇ〜シューカツはこういうことか、と思いながら読む。はらはらドキドキ。容姿とか性格も含めて、人にはそれぞれどうしようもなく才能の範囲がある。「分相応」を受け入れるのは、とても厳しいことやと思う。で…

1月に読んだ本

趣味で読んだ本のみ。仕事じゃない本を全然読んでいないのやなぁ、と真剣に反省しつつ。「今日もていねいに。」いやぁ良かった。手作り丁寧暮らしは時々苦手やけど、全然そういうくくりの本ではなかった。一番感じたのは、著者の松浦さんの孤独。孤独ととこ…

ツーアート (光文社知恵の森文庫)(ビートたけし、村上隆 著)

めっちゃ面白い。村上隆がアートについて真っ向からの問いをビートたけしにぶつけるという形式やけど、お互いに直球では答えないので広がりがある。工芸とアートの話とか、デュシャンについてとか、GEISAIのことあたりの話し方、言葉の選び方はすごいんちゃ…

(海堂尊 著)

やーっぱ面白い!毎回、物語の鍵になる絶妙な病気とか設定を持ったキャラクターが登場。私は今回はリリィにほれぼれ。海堂さんなりの医療の理想とか問題点もあちこちに隠されてると思うので、こっそりメモ。

(三崎亜記 著)

ずっとほったらかしにしてた話題の小説。覆面とかボタンとか、装置の作り方がさすがよな。「自分探し」とか、日々の何気ない不安の様子が直接的じゃなく出てきちゃうので、ありえないのにありえる感じがぐぐっと迫って恐ろしい。そこに政治が絡むのがまたす…

ぼくらはガリレオ―落下の法則の探究(岩波科学の本)(板倉聖宣 著)

しばらく理系理系と騒いでるうちに、小学生の時に読んでいた本のことを思い出した。この本、今読んでも自然科学への親しみがわき起こるし、大事なことを分かりやすい言葉で書いてあるし、やっぱ面白いと思った。と言いつつ、途中の実験の部分とか理論をとば…

いろいろ

「どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか? (角川文庫)」(中島義道著)読了。うーん、よく分かるっちゃ分かるし、個人的には嫌いじゃないけど。・・・厳しい人やねぇ。生活レベルにまでおとしこんだ知恵が書かれてるので、なるほどと思うこ…

不当逮捕 (講談社文庫)(本田靖春 著)

戦後、読売社会部の名物記者が検事の汚職をスクープして“不当逮捕“された事件を巡るドキュメント。名物記者となるまでの華々しい活躍と逮捕に至るまでの経緯、事件を巡る世間での扱い、記者職のプライドなどから、立体的に時代が浮き彫りにされていく。 新聞…

理系思考(元村有希子 著)

毎日新聞科学環境部は「理系白書」以来気になる存在。読み進めるうちに、理系の良さのポイントがちょっと自分の中で見つかった。 村丸ごと生活博物館のことを知ってテンション上がる!これおもろい! そういえば「理系の人々」も「理系クン」も、とってもよ…

再婚生活(山本文緒 著)

本を読んで、これほどリアルにうつ病の症状を想像できたことはなかったかも。睡眠などなど、生理的なことがコントロールできないって一番辛いよな。生理的なことなので、不安の量は減らせない。自分で気持ちを落ち着けなきゃと思っても変えられへんもんね。…

なんくるない(よしもとばなな 著)

ばななさんは優しいな。世の中と折り合いをつけられない人を見つめる視線が本当に優しい。昔の作品では、そういう人たちがもっと繊細な感じで、自分の世界を守るために世界ときっぱり距離を取ってた感じがする。最近の小説は、ちゃんと日常生活を送っていて…

沖で待つ(絲山秋子 著)

絲山さんの本で未読なのは、あと1冊になってしまった。悲しい。本腰の入った投げやり感が今の気分に合って心地よい。 いつだかTちゃんが「アンニュイって若いじゃない?」と言っていた。感覚的な言い方やけど“アンニュイ”は、期限付きのやるせなさ。いつか抜…

無銭優雅(山田詠美 著)

この本こそTさんと語り合いたかった。楽しさを求めるっちゃ求めるのよ、文句ある?という感じの腹の決まった感じが、山田詠美さんにしか書けない言葉で次々に!思わずメモ。華があるなぁ、すごいわ!

白菜のなぞ (平凡社ライブラリーOffシリーズ)(板倉聖宣 著)

白菜って日本ではいつの時代から食べてるの?というのが、著者の最初の素朴な疑問。その謎解きの本のはずが、日本の農業の歴史を語り、生物と種の話に広がっていく。衣食住の身近なものの中にサイエンスを見つけ出すってこういうことか!と納得。 白菜を育て…

スモールトーク (角川文庫)

人生で大きなイベントが一段落。ビール飲んで、夜更かしして、しばらく遠ざけていた小説を読もうと決意していた。 というわけで絲山さん。おもしろい〜! 車好きの女性主人公のところに、15年前に別れた男がカッコいい車に乗って何度も何度も現れる。しかも…

闇の子供たち (幻冬舎文庫)

うげぇ、おぞましい。目をそむけるなと言われても、やっぱりそむけたい。人間は残酷なんやな、と改めて実感する。 タイの幼児売買春も臓器売買も、聞いたことはあった。うーでもさ〜。。。「正義の味方登場!」みたいに話の展開で救われることがない分、余計…

少女七竃と七人の可愛そうな大人

そうそう、もやもやの答えの一つが見つかった。主人公の七竃は、たぐいまれな美しさを持っていて賢い女性。思いっきり妬まれて、意地悪されて、周りから“浮いてる”。 それって「異形の人」と思われてるからなんやね。異形の人と表すのがさすが。この小説の設…

死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う

今年の春くらいから、死刑関連のニュースがやたら気にかかった。 鳩山大臣が次々に死刑を執行し、光市の母子殺害事件では死刑判決が出て、「死刑になりたいから」という理由の殺人が多発。それぞれにショックを受けたのは受けたけど、正直なところそういうニ…

肝、焼ける

読みそびれていた朝倉かすみさんのデビュー作。あちゃー、もう!なんでこんなに女のダメっぷりを書いてくれちゃうかな〜、内緒にしといてよーって感じ。職場の噂話、好きな子に変なタイミングで内容のよく分からない手紙を書くところ、ボーナスで買ったPCで…

いろいろ

つんどく、読みかけ、があまりにも多かった。。。最近読んだ本たち。 「折り返し点―1997~2008」この記事を読んで、ぜひ読んでみなくちゃと思ってたのやった。興味のあるところをとばしとばし。アニメージュの尾形氏とのエピソードは、ぐっとくる。 「十二支―…

バケツ

やっと「バケツ (文春文庫)」が出た出た出たーーー! 読み返してたら、登場人物がそれぞれ自分の弱さを出しちゃうところにぐっときてしまった。自分の気持ちが状況に合わなくなってくると、ちょっとしたことで感情爆発! ちゃんと爆発を人にぶつけててエラい…

いろいろ

限界集落ーMarginal Village書店で見かけて即買い。タイトルが強烈でびっくりした。日本の過疎地をちゃんと訪ねてちゃんと写真撮ってる。すごい。 ラウンダバウト 1 (クイーンズコミックス) パイロットフィッシュ (角川文庫)人にすすめたらえらく気に入られ…

ピアノ・サンド

Tさんにもらったまま読んでいなかった本を読了。 どうしたんすかTさん、いつもの趣味と違うじゃないすか、何を思いながら読んでたんですか。 女性が、私を見て!と素直に言い切れない屈折した気持ちとか、男性に対してふと投げやりになる瞬間とかがすごくう…