死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う

今年の春くらいから、死刑関連のニュースがやたら気にかかった。


鳩山大臣が次々に死刑を執行し、光市の母子殺害事件では死刑判決が出て、「死刑になりたいから」という理由の殺人が多発。それぞれにショックを受けたのは受けたけど、正直なところそういうニュースを見ても何をどう考えていいのか分からんかった。イライラしていろんな人と話す中ですすめられたのがこの本。かなり長い間ツンドクだったのやけれど、ふと読んでみて、とにかく死刑は社会のシステムなのだということはよく分かった。


システムなので、担当者が任務を滞りなく遂行すれば評価されるし、関わるスタッフは自分の行動に疑問を持ってはいけない。死刑の宣告から死刑執行までの間に死刑囚を死なせてはいけないし、生活させる(外部との接触なども含めて)上でのルールには意味はない(ように一般人には思える)。


森さんの取材力は確かで、誰に対しても「自分の立場を超えて、一人の人間として死刑についてどう思うか?」というようなことを必ず引き出そうとしてた。それでもシンプルな答えは出てなくて、つまり死刑ってそういうことなんやろうと思う。生物としての人間とシステムの間に矛盾をはらんでいて、感情を挟む余地はなし。


自分がどう考えたらいいのか、という答えは見つからないけど、とにかく読んで良かった。