口元と照れ笑いを考える

映画「誰も知らない」の中で、主人公役の柳楽くんがお金を借りに行くシーンがずっと心に残ってた。兄弟を代表して、切羽詰まって生活費を借りに行く。男と男の対面、みたいな緊張感のシーンなのにへらっと笑ってしまって「何をにやけてるんだ」とどつかれていた。

へらっと笑ってしまった表情が忘れられない。すごくリアルやと思う。怖さとか緊張が高まった時って、なんでか知らないけど口元がゆるむ。柳楽くんが演技だったのか、本当に口元がゆるんでしまったのかは分からないけど、複雑な心情をあらわしていてすごく鋭いと思った。

町中の人を見ていても、口元って気になる。

目は、雑誌なんかでもよく特集があるし、目力=モテとかとつながるイメージ。女の子は”目力”訓練には慣れてるけど、口元を鍛えるのは難しい気がする。私自身、極度の怖さと緊張と、抑えきれない得意げな気持ちの時に絶対に口元がゆるむ。

と思ってたら、最近読み直した吉田修一東京湾景』の中で、メル友殺人の犯人がニュースで流れるのを見て主人公が「照れ笑いに見える」と思っていた。口元はやっぱり、隠しきれない何かが出ちゃうのやと思う。