古本と古美術

考えてみれば、20歳ごろから周りにいつも古本好きな人がいた。昔は表紙がすり切れて茶色い紙が破けていて、旧かなづかいで読めない本のどこがいいのかと思ってた。でも、そういう人が周りにいて良かった。

書かれた時代の背景に知識を持って、書いた人、印刷して製本して残した人に想像をめぐらせるとだんだん見えてくる。そういう世界に没頭して楽しんでいる人たちを10年くらい身近に見ていて、今古美術のことを知るようになってなんとなくつながってくる。古美術も古本も同じ。

古いから良い、でも古いだけではいけなくて美しさがなければいけない、という感覚。日常からは少し離れているので想像力が必要。

そういえばブックカバーを偏愛する友人もいる。書店で本を買った時にかけてもらえるブックカバーを大事に持っている。収集家なので、たぶんかるく衣装ケース一本くらいは持っておられると思う。一言でいえばオタク。それぞれのブックカバーの良さなんて周りには尋常の感覚では分からないのだけれど、それでいい。そういう狭い世界のこだわりを持つ人は徹底している。そういう人がいないと物は残っていかないわけで。大事に扱っているものは違っていても気持ちは通じる。