リアル体験とバーチャル体験

美を感じるためには、実際体験が必要・・・と前に書いたけれど、バーチャル体験はどうなんやろう。技術の力で、リアル世界と同じくらい生々しい3次元を体験できる現代。バーチャルな体験は、美を感じる感覚につながるんやろうか。っていうか、2次元でも3次元でも、日頃から深く現実以外の世界を体験している人はたくさんいるはず。

私はバーチャル体験が人よりかなり少ないはず。(「アバター」を見そびれ、Ustream坂本龍一宇多田ヒカルのライブも見そびれ、この数年に話題になった新感覚体験はすべて逃してる)自分の体験としてはなんとも言えないけど、ふと、ゲームやネットでたくさんバーチャル体験をしている人は、身体感覚としてどういう美観を持っているんやろうと思った。

例えば今、森美術館でやってる小谷元彦「幽体の知覚」展。滝の映像作品「インフェルノ」は、見る人それぞれのリアル/バーチャル体験の深さによって、まったく感じ方が違うんちゃうかと思う。

私は、リアルの滝が好きなので、作品を前にして実際の滝の前にいる体感覚を思い出してた。滝をずっと見ている時に一瞬無音になる感じ、上下感覚が狂う感じ、水の粒を見てるのか流れを見てるのか、自分の立ち位置とか距離感覚が失われる無重力みたいな感じ、ふわっとなったり気持ち悪くなったり、そういうのを味わってなんというか吐きそうやった。でも周りの人は「わーっ」とか言って遊園地のアトラクションで遊んでいる人みたいな感じに見えた。

その反応って、作品の感じ方としてある意味冷静な感じがする。良い悪いではなくて身体体験が違う気がした。彼女たちは、もしかしたらバーチャルな世界でああいう立体的な世界をたくさん体験してるんちゃうか。私は滝を思い出したけれども、バーチャル世界をたくさん体験している人は違う連想をしたかも。あの作品に対して一体どういうことを思っていたんやろう。すごく知りたい気がした。