熊澤未来子「謎の世界へ」

破滅に向かうのって、ある瞬間を超えると楽しい。そのエネルギーを圧倒的に感じる絵やった。


線の緻密さは、石田徹也氏を思い起こす。でも、石田氏は世間と自分の感覚のずれを自画像で表して、自分を責めて傷つけているように見えるのに対し、熊澤さんは突き放した感じなのが強い。極限に追いつめられたら人間って目的を見失うんやな、としみじみ感じさせられる。何のために壊すのか、なんて関係なくなって「壊すのって楽しいやん!」になる一瞬。そういう極限状態を「人ってアホやな」とシビアに見ている感じ。男女の差かな。


「最後の晩餐」は料理のメニューがバランス悪いしぐちゃぐちゃやし、食欲があるのかないのか、人を傷つけたいのか、自分が死にたいのか、もうよく分からない。表情だっておぞましい。タイトルのつけ方までが冷酷な、おそろしい人やと思った。また是非見たい。


あ、モノトーンの絵の方が世界が、ぐにゃりと曲がって熊澤さんらしさを強烈に印象づけてたと思う。


ギャラリーMoMoにも伺う。江戸東京博物館の前に新スペースができたと聞いていたけど、ホンマに目の前。元々倉庫だったということで、天井は高く奥行きは広く、異次元にすぐにワープできるとても良い空間やった。旅心をくすぐられます。奥の部屋がまた良く。昔の梁が残されていて、広い狭い、新しい古い、そういう二元的な感覚は狂ってしまう。どんな作品でも受け入れてくれそう。


夜はKさん相手に「大人になるってつまらない」と子どもぶってみた。まぁまぁ・・・となだめられるでもなく、意外にバカ受けしてしまったのでご機嫌に帰る。