ヘルタースケルター

ものすごい映画。沢尻エリカの演技がハンパない。彼女じゃなきゃできなかったと思う。人形みたいにきれいな体の線と、どうしようもないエロティックさが、スクリーンの中でだんだん狂っていく。狂って壊れて、それでも生きる。

岡崎京子さんはすごい。原作は、20年以上前のもの。当時はまだ、人の欲望とか芸能界の中は一般社会に晒されないで、芸能界とかマンガの世界やったはず。でも、今はみんな、あの世界をリアルなものと思ってしまえる。映画を見て、沢尻エリカの私生活があんな感じと思った人もいるんちゃうか。岡崎京子の直感力に、世の中が追いついたんやと思った。

それを今、映画に撮った蜷川実花さんは、さらにまたすごい。彼女の作品がすごいのは、現実と非現実の錯乱した感じを撮っていること。誇張した色、溶けてる境界線、そういう世界で、現実と非現実は混乱していく。2008年オペラシティの蜷川実花展の時、造花と実際の花の区別が分からなくなってくらくらした。それがこの映画にも現れて、狂気の世界に引きずりこまれる。

発展して、消費の欲望を考える。蜷川実花さんは、渋谷で思春期を過ごしている。バブル〜ロスジェネ時代を生きた人。生きた人にしか撮れない世界があると思った。エンドロールに並んだ膨大なブランドの名前だって作品の一部に思えてくる。